「貯蓄性が高いと聞くけど、どのくらい高いの?」
「リスクがありそうで、手を出しづらい」
「そもそも仕組みがよく分からない」
ドル建て保険について、このように感じたことはありませんか?
そこで今回は、円建て保険との比較やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。
超低金利時代が続くなか、貯蓄性の高さで注目されているドル建て保険について知っておくと、今後の選択肢の幅が広がりますよ。
ぜひ最後までご覧いただき、超低金利時代を生き抜くヒントにしてください。
ドル建て保険とは
ドル建て保険とは外貨建て保険の一種で、終身保険、養老保険、個人年金保険などの種類があります。
契約者は保険料をドルで支払い、保険金・年金・解約返戻金・満期保険金なども原則としてドルで受け取ります。ただし、保険会社によっては、支払いも受け取りも円でできる場合があります。
円建て保険との違い
基本的な仕組みは円建て保険と同じで、保険会社が契約者から預かった保険料を、金融商品(国債や株式など)で運用します。円通貨がドルになったものがドル建て保険で、アメリカの公社債などに投資してドルで運用します。
円建て保険との大きな違いは、円よりも金利が高いので貯蓄性があること。支払う保険料や受け取る保険金が為替相場の影響を受けるため、元本保証がないことが挙げられます。
ドル建て保険が注目されるようになった理由
ドル建て保険は昔からありますが、2016年に日銀がマイナス金利政策※を導入してから注目されるようになりました。マイナス金利政策によって、金融機関が個人の預金口座の金利を引き下げたため、超低金利時代が訪れてしまったのです。
2015年まで年利0.02%だった国内メガバンクの普通預金金利は、2016年以降0.001%に下がったままの状態が続いています(2022年3月現在)。仮に100万円を1年間預けたとしても、たった10円の利息しかつきません。定期預金に預けたとしても年利0.002%で利息は20円です。
(参考:日本銀行HP 金融経済統計月報)
そのような背景があり、ドルによる資産運用を検討する人が増えています。
同じ資産を預けるなら、より貯蓄性が高い方を選びたいですよね。ただし、ドル建て保険は為替相場の変動や為替手数料に注意が必要です。
マイナス金利政策とは?
日銀が経済活性化とデフレ脱却を目的として導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のこと。2016年2月16日開始。
民間の金融機関が日本銀行に預けている当座預金の一部に対して、マイナス0.1%の預金金利を適用する政策。金融機関が日銀に資金を預けたままにしておくと、預金者(金融機関)が金利を支払わなければなりません。その預金が市場に出回るように促すことで、経済の活性化を目指しています。実際に、住宅ローンの金利が下がり、住宅購入には有利になりました。
しかし、この政策によって日経平均株価の下落や円高など、さまざまな影響が出ました。さらに、コロナ禍の経済的影響もあり、経済活性化もデフレ脱却も達成できていません。
なお、この政策自体は個人の預金には適用されませんが、金融機関は個人の預金口座の金利引き下げや各種手数料の値上げなどを行い、私たち個人にも影響が出ています。
(参考:日本銀行HP)
ドル建て保険のメリット
ドル建て保険には、以下のメリットがあります。
- 円よりもドルの方が高金利で貯蓄性が高い
- 予定利率が高いため保険料が安い
- 為替相場によっては為替差益が期待できる
- 円安が進んだ場合にリスクの分散ができる
それぞれ詳しく解説します。
円よりもドルの方が高金利で貯蓄性が高い
1998年から長期にわたって続くデフレ(物価の下落が続く状態)やマイナス金利政策の影響もあり、円建て保険の金利はあまり期待できません。積立期間や契約年齢によっても異なりますが、10年もので0.1%程度とほぼゼロの状態が続いています。
一方ドル建て保険の金利は、保険会社によってさまざまですが、最低利率2.5%保証という保険商品も見られます。アメリカの市場金利が上がればさらに上昇し、下落したとしても最低保証金利が設定されていれば、それより下がることはありません。
予定利率が高いため保険料が安い
予定利率とは、保険会社が契約者に約束する運用利回りのことで、金融庁が発表する「標準利率」を参考に決められます。予定利率が高いほど、保険会社は将来支払う保険金のための「責任準備金」を増やすことができ、その分保険料は下がります。ドル建て保険は円建てよりも予定利率が高いので、保険料が安くなります。
為替相場によっては為替差益が期待できる
ドル建て保険は、高金利による運用収益のほかに、為替相場の変動による為替差益が期待できます。
保険料を支払った時よりも、保険金・年金・解約返戻金・満期保険金などを受け取る時の方が円安であれば、為替差益が得られます。たとえば、1ドル100円の時に支払い、1ドル120円の時に受け取ると、円安による為替差益が1ドルあたり20円発生します。
円安が進んだ場合にリスクの分散ができる
すべての資産を円で保有している場合、円安が進んで輸入品の価格が上がると、資産全体の価値が相対的に下がります。資産の一部にドルを取り入れることで、リスクを分散できます。
ドル建て保険のデメリット
ドル建て保険には、以下のデメリットがあります。
- 為替相場の変動で損失が出る可能性がある
- 為替相場の変動で保険料が高くなる可能性がある
- 円とドルを両替する際に為替手数料がかかる
- 契約時・解約時に手数料がかかる
それぞれ詳しく解説します。
為替相場の変動で損失が出る可能性がある
保険料を支払った時よりも、保険金・年金・解約返戻金・満期保険金などを受け取る時の方が円高になると、為替損益が生じます。たとえば、1ドル120円の時に契約して保険料を支払い、1ドル100円の時に受け取ると、円高による為替損益が1ドルあたり20円発生します。
為替相場の変動で保険料が高くなる可能性がある
毎月支払う保険料が為替相場によって変動し、円安が進むと高くなります。たとえば、保険料が毎月100ドルの場合、円に換算すると1ドル100円の時は10,000円ですが、1ドル120円になると12,000円に上がります。逆に、円高が進むと保険料は安くなります。
一時払いや前納ができるならば、検討してみてもよいでしょう。
円とドルを両替する際に為替手数料がかかる
円からドル、ドルから円に両替する際、必ず為替手数料がかかります。
為替手数料は保険会社によって異なりますが、1ドルあたり0.5円が目安です。死亡保険金が10万ドル、為替相場が1ドル110円として円で受け取ると、死亡保険金は1,100万円で為替手数料が5万円かかる計算になります。
契約時・解約時に手数料がかかる
ドル建て保険は、ほかにも独特の手数料がかかります。
契約時には初期手数料、解約時には解約手数料が差し引かれる場合があります。保険会社によって異なるので、事前にしっかり確認しましょう。
ドル建て保険に向いている人
ドル建て保険に向いているのは、次のような人です。
- 為替変動リスクを理解している
- 為替相場を見極めて、加入時期や解約時期を自分で判断できる
- 資産にゆとりがある
- 解約または保険金受け取りまで20年程度の時間がある(20~40代)
- 将来的にドルを使う予定がある
それぞれ詳しく解説します。
為替変動リスクを理解している
為替変動の影響を受けたり、為替手数料がかかったりと、円建て保険にはないリスクがあることをきちんと理解し、許容できる人であれば向いています。
為替相場を見極めて、加入時期や解約時期を自分で判断できる
支払う保険料も受け取る保険金も為替相場によって変動するため、円高の時に加入したり、円安の時に解約したりするなど、自分でタイミングを判断し、納得できる人は向いているでしょう。
自分で調べたり判断したりするのが不安な人は、お金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるという方法もあります。
資産にゆとりがある
保険金・年金・解約返戻金・満期保険金などを受け取る時に円高が進んでいた場合、円に両替すると為替損益が生じてしまう可能性があります。そんな時は、円に替えるタイミングを待つ余裕が欲しいところ。
「絶対に損はしたくないし、受け取った保険金はすぐに使いたい!」という人は、ドル建て保険は考え直した方がいいかもしれません。
将来的にドルを使う予定がある
海外旅行や移住、駐在などでドルを使う予定がある人は、ドル資産を運用しつつ、円へ両替時に発生する為替手数料も必要ないので、保有するメリットがありますね。
また、海外のショッピングサイトを利用する人は、ドル決済という活用方法もあります。
ドル建て終身保険の活用方法
ドル建て保険には、以下のような活用方法があります。
- 高金利の運用と為替差益の2つの収益が期待できる
- 生命保険としてさまざまな活用が可能
貯蓄性の高さについてはメリットの項目で解説した通りですが、ドル建て保険は本来の生命保険としてもさまざまな活用方法があります。
生命保険で節税対策
その年に支払った生命保険の保険料は、その年の年末調整や確定申告の際に、最大12万円までの「生命保険料控除」を受けられます。これは、ドル建て保険も円建て保険と同様の扱いです。
生命保険料控除を受けるには、保険契約している保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」を年末調整や確定申告の書類に添付する必要があります(紛失にご注意!)。
また、終身保険の保険契約者が死亡時には、葬儀費用や遺族の生活保障としてはもちろん、相続税対策にもなります。死亡保険金には非課税枠があり、法定相続人1人あたり500万円までが非課税です。たとえば、死亡保険金を家族3人で相続した場合、500万円×3=1,500万円が非課税となります。
教育資金や老後資金として利用
子どもの教育資金や老後資金などが必要になった際に、途中で解約して返戻金を受け取ることができます。ただし、保険料の支払期間が短い場合や、為替レートの変動によっては、元本割れすることがあるので注意が必要です。
また、貯蓄性のある生命保険には「契約者貸付」という制度があります。解約した場合に戻って来る解約返戻金の範囲内でお金を融資してもらえるサービスです。自分で積み立てたお金から借り入れるため、審査も保証人も不要で、利用目的を問わず、上限額の範囲内で何度も借りることができます。返済のめどがあり、保険契約を継続したいなら、こちらを検討してもよいでしょう。
なお、貸付金には利息が発生します。金利は保険会社によって異なりますが、一般的なカードローンよりは低金利です。自分のタイミングで返済できる点もポイントです。
ドル建て保険のよくある質問
ドル建て保険について、よくある質問を解説します。
10年物国債利回りで比較した場合、日本0.22%に対してアメリカ2.32%です。(参考:ブルームバーグ/2022年3月時点)
なお、生命保険の金利は保険会社や商品によってさまざまです。
両替で発生する為替手数料もかかりませんし、円に替えない限りは為替損益も発生しません。海外旅行や留学、海外のショッピングサイトでドル決済をするなどしてドルのまま有効活用したり、為替相場の状況を見計らってより円安になった時に円に両替したりするとよいでしょう。
まとめ
この記事では、ドル建て保険について以下のような解説をしました。
- ドル建て保険とは、ドルで運用する生命保険
- 円建て保険と比べて金利が高く、貯蓄性がある
- 為替相場の影響を受けるため、リスクもあるし差益が生じることもある
- 円・ドル間の両替時に為替手数料が必要
資産にゆとりがあり、将来的に海外でドルを使う予定のある人は、ドル建て保険を資産形成の選択肢の1つとして検討してみるのもよいでしょう。
ドル建て保険は、円高なほど保険料が安くなり、円安の時に受け取ると為替差益が期待できます!